中小SIerってどんな感じ?3年働いた経験を元にまとめました

2019年6月13日

こんにちは、アマノケンシです。

IT業界への転職を目指しているみなさん。

「本当にSIerでいいですか?その会社大丈夫ですか?」

この記事がみなさんの選択に役立てば幸いです。

昨今IT業界は需要が伸び続けていますが、供給が追い付いていません。そのため未経験の方でも比較的参入しやすくなっております。需要過多の状態で比較的稼ぎやすいので、未経験からプログラミングを学習してIT系企業への転職をした方や、転職を目指している方が増えてきている印象です。

IT系企業への転職を考えたとき、業界について調べているとこんなキーワードを目にすると思います。

「Web系」と「SIer」

私はWeb系企業での労働経験はありませんが、中堅中規模SIer企業に3年間勤務していました。
この記事では上記の経験を元に、中小SIer企業についてメリット・デメリットなどをまとめます。

SIerとは

System Integrator(システムインテグレータ)とも呼ばれ、システム構築から導入、その後の運用をすべて請け負う事業者のことを指します。

自社でサービスを提供するのではなく、他社の業務を改善するために業務内容を解析し、手作業で行っているなどの理由で効率の悪い業務を、システム化によって効率化するのが主な仕事となります。

SIerの業務内容は会社規模にもよりますが、非常に多岐にわたり、業務内容の解析から改善案の提案、システムの設計、ハードウェア・ミドルウェアの調達・選定、プログラミングによるシステム開発、システムの導入支援(マニュアル作成など)、システム導入後の運用サポート(Q&A対応やバグフィックス、データ修正など)などシステム開発における全工程を担当します。

ここでは解説しませんが、SIerの中でもユーザー系・メーカー系・独立系などの分類があり、それぞれで特徴が変わります。

著者が働いていたSIerについて

私が働いていたのは、都内の中堅中規模の独立系SIerで、社員数は100数十名でした。業務的には他社を挟まずに大手から直接請けている自社開発業務もあれば、SES契約で2次請けや3次請けの客先常駐業務もありました。さすがに4次請けやそれより多くの会社を挟んだ業務はありません。またビジネスパートナーも多数いました。

私が所属していた部署はSES契約での2次請けや3次請けをメインとした、製造業向けのシステムを開発する部署です。私の担当業務は、大手ユーザー系SIerやメーカー系SIerからの2次請けで、客先常駐であったため、そのことをメインに書きます。

中小SIerのメリット

求められるスキルが低い

端的に言ってしまえば、入社段階でスキルが必要ありません。多くの企業で未経験者を積極的に採用しています。若くて普通にコミュニケーションが取れれば、就職にはあまり苦労しないと思います。入ってからもスキルの低い先輩社員が多く、そこそこの仕事でそれなりの給与をもらえるのはメリットかもしれません。「とりあえずITで働きたい」場合の最初の選択肢としては選びやすいと思います。

元請けでない場合、責任を問われづらい

2次請けや3次請けなどSES契約で直接仕事を請けていない場合、責任を取るのはあくまでも元請け。問題があっても責任を問われづらいです。後述しますが、代わりに裁量は低くなります。

プログラムを書ける機会が多い

大手であればあるほど、元請け企業はコーディングをしません。代わりに下請けの中小SIerがコーディングをすることになります。場合によっては設計から。こうした背景から、大手企業に比べると社内に技術的ノウハウが蓄積されている場合が多いです。

大規模システムに関われる

私が担当してきたシステムは、軒並み大企業向けの規模の大きなシステムでした。中には億単位のデータを扱うシステムも。中小SIerでも意外にこのような大規模なシステムに関われることは多いので、大きなメリットだと考えています。Web系で大きなシステムに関わるには、技術的に評価されなければならないイメージです。

社内行事をバックレできる

客先常駐であれば帰属意識はなくなります。それを逆手に取り「業務が忙しいから」と言って、無駄な社内行事をバックレられます。理解のある上司であればとやかく言いません。

中小SIerのデメリット

案件ガチャ

業務の満足度はさまざまな面で元請け企業や、その中のプロジェクトに依存します。荒っぽい言い方になりますが、クソみたいな元請けやシステムにアサインされてしまった場合、現場が変わるまで苦しみ続けます。実際それで精神を病む人も多いです。

技術的に枯れすぎ

使われる技術はJavaやSQLがメインで、そのJavaのバージョンすら低いことがあります。特にパッケージを利用している場合、Javaのバージョン変更はリスクが高いので、顧客の予算が取れるまでは古いままであることもざらです。実際私が担当していたJavaベースのシステムは、2019年でもJava6でした。Web系で人気のRubyやPHP、Pythonを使うこともありません。新しいことが正義とは言いませんが、古すぎて逆に効率的でないことが多いです。

会社規模が小さすぎると永遠にテスター

会社規模があまりにも小さい場合、3次請けや4次請けなど下請けの中でも下になりやすいです。そのため、歴2年でも開発経験がなく、テスターや問い合わせ対応しかできないといったこともざら。実際他社のパートナーさんにそういう方がいました。

裁量がない

担当する作業が下流工程になるので、難易度が低く責任問題になりづらい代わりに裁量がありません。これまた荒っぽい言い方になりますが、元請けの引いた現実性のないスケジュールにも、文句を言えない場合が多いです。あと基本的に元請けは開発をしないので、見積もり能力が低くスケジュールを引くのが下手。それでも諦めるしかない。

開発環境がしょぼい

これはSIerである以上、大手でも同様です。私が所属していたSIer企業では、デュアルコアのCore i5、メモリ4GB開発に耐えられるとは思えないスペックのノートパソコンが普通に支給されます。データ移行案件を担当しているときに、本番データをローカルにコピーして作業していた際、案の定メモリの少なさが仇となり、パソコンがご臨終しました。

また、大手自動車メーカーのシステムを担当していたときには、顧客が用意した仮想環境で作業をしていました。32bit OS、メモリ3GB程度のこれまた開発に耐えられるとは思えない環境が提供されており、毎日14時から16時の間はなぜか動作が悪く、仕事にならないことも。仮想環境に接続するために1次請けから提供されたノートパソコンも、型落ち機種で電源ケーブルを抜いた瞬間に電源が落ちるほど、バッテリーが劣化しきったものでした。仮想環境がシンクライアントであったため、本体のスペックが低いことに文句はありませんが、バッテリーのせいで打ち合わせ前に毎回電源を落とさなければならないのが大変面倒。

こんなレベルの開発環境が提供されることは、決して珍しいことではありません。

偽装請負

偽装請負と言われてピンと来ない方はこちらの東京労働局HPをご覧ください。

はっきりと言うと、偽装請負が横行していない現場はほとんどなく、大変希少です。元請けから作業指示をされるのは当たり前で、酷い場合には勤怠管理までされます。休出を依頼(実質命令)されることも。

待遇面の満足度が低い

私が所属していたSIer企業は給与に関して不満はなく、3年目で額面ですが450万程度の年収がありました。上場企業の同年代と比べてもあまり差はなかったように思います。ただこれは会社規模と会社自体に依存するので一概には言えません。

また下請けになるほどピンハネされるので、単価は低くなりがちです。酷い業務では、3年目に2次請けで開発も管理もして、ほかの現場の新人と同程度の価格でした。元請け社員のダメ設計を再設計してなんとかリリースしてもこの価格です。

給与についてはそれなりに満足していましたが、教育などに関しては同じSIerでも大手と雲泥の差があります。多くの企業で、新人研修は申し訳程度に行われますが、内容的にはあってないようなものです。OJTとは名ばかりのただ業務をさせられます。その割に報告系の資料は作らされたり発表させられたりする会社も。

たとえば私の場合、3年目で同じ業務内に新入社員が配属された際は、誇張でもなんでもなくほぼ私一人で面倒を見ていました。これが大手になると、複数の先輩社員がついたり、管理職が直接業務説明をしたりとサポートが手厚いです。新人研修は福利厚生だと思っています。

あとなぜかスーツです。本社勤務であれば自由な場合もありますが、客先常駐のほとんどはスーツ強制なので、私服で働きたい方は気を付けてください。

本当に中小SIerでいいのか考えましょう

  • 中小SIer企業は若ければスキルが低くても入れる
  • 大企業に比べるとプログラムを書く機会は多い
  • 客先常駐の場合、偽装請負は避けられないと思った方がいい
  • 技術的には枯れていてる
  • 結局案件ガチャ次第